2007. 09. 29  
070928_104804.jpg
昨日ワインをたっぷり飲んだばかりですが、シャトーオーブリオン2004とシャトーデュアルミロン2004が届きました。シャトーデュアルミロンは初めてなので、早く飲んでみたいです。
スポンサーサイト
2007. 09. 27  
070927_213121.jpg
ホテルでワイン祭りがあったので行ってきました。料理はコースになっていてどれも美味しく、ワインの方は目玉の5級シャトーが一番よかったです。帰りは友達が勤めているお寿司屋さんで、おみやげ寿司を買いました。(友達に握ってもらいました)これもまた美味しかったです。美味しいづくしで幸せな一日でした。
2007. 09. 21  
070921_222028.jpg
サムライスピリッツ零 真鏡名ミナのフィギュアが届きました。スケールも大きいし、躍動感があっていいです。
2007. 09. 20  
070920_063700.jpg
ブログをリニューアルしました。仕事用にサンプル短編小説のカテゴリーを追加しました。ヤマトさんのスコープドッグもレッドショルダーカスタムパーツを取り付けました。でかくて迫力あります。これはあんまり関係ないか(笑)
2007. 09. 20  
■タイトル■
昼下がりのバスケットボール

■あらすじ■
「通うのも面倒だし一緒に暮らさない?」ある日、石沼一弥はつきあい始めて一年になる栗沢美佳から、軽い口調でそう誘われる。「そうだな、それもいいかもな……」即答はしなかったものの、一弥は同棲に備え部屋の片づけを始める。そんな矢先、一弥の元に一通の葉書が送られてくる。『お元気でしょうか? この度、故郷の北海道へ転居することになりました』藤村康夫。その名を見て一弥の心に、忘れられない過去が蘇る。それは中学の頃いじめで自殺した藤村優美子のことだった。一弥は次第に優美子のことばかり考えるようになり、自分の殻に閉じこもってしまう。

☆本編☆ 
 タイトル『昼下がりのバスケットボール』
 午後十時を回ったというのに、蝉の鳴き声は相変わらずやかましかった。エアコンの温度を下げつつ、携帯で彼女の栗沢美佳(くりさわみか)と話す。
「ねえ、この間の話だけどいつ頃行ったらいい? あたしの方は週末までには、かたがつきそうだけど」
「わりぃ、俺の方はまだ片づいてねぇわ」
「えーそんなに片付けるほど物あったっけ?」
「あるよ。馬鹿にすんなよ」
「あははっ、何ならあたし手伝おうか?」
「いいよ。エロ本とか出てきたらヤベェしな」
「そんなの気にすんなって。どうせエロ本どころじゃないことあたしにするくせに。変なところ気にするのねー一弥(かずや)は、ふふっ」
 軽口をたたき合ういつもの遣り取り。気を許している相手だからこその会話。こういう状態に幸せも感じる。
 だが美佳と同棲するための片付けは、まるで進んでいない。進める気になれなくなったのだ。
 あの葉書が届いてから、ずっと避け続けていたあの人の存在が日に日に強くなっていく。
 こうして美佳と話しているのに、俺は時折上の空になっている。
『ご無沙汰しております。お元気でしょうか? この度、故郷の北海道へ転居することになりました』藤村康夫(ふじむらやすお)。
 実家から転送されてきた一枚の葉書。それで俺の日常は変わり始めていた。
「あ、お風呂沸いたみたいだからそろそろ切るね。また明日会社で」
「ああ、そんじゃ」
「ちょっと一弥!」
「何だよ?」
 携帯を耳から離そうとすると、美佳のでかい声が待ったをかけた。声色からして、きっと何かを抗議するつもりだろう。
「何か忘れてません?」
「えっ、何でしたっけ?」
「もーすっとぼけないでよ。いつものやつ、いつものやつ」
「ったく……別にいいだろそんなの」
「だーめ早く」
 こういう時、美佳には絶対ごまかしが効かない。こうなった時点で俺の負けなのだ。
 何度言っても恥ずかしいが言うしかない。
「チッ……好きだよ」
「あはっ、あたしも大好き。おやすみー」
 心底嬉しそうな美佳の声が聞こえたあと、俺は携帯を閉じた。
 ベッドに倒れ込むと胸がきりきりと痛んでくる。嫌なことを思い出すといつもこうなる。
 眠れないかもしれない。今日も明日も……。

 あれは中学2年、中間テストの当日。朝から小雨が降っていた。
 前の晩ろくに勉強もせず、俺は開き直って開始を待っていた。すると妙に落ち着きのない彼女に気づいた。
 田舎っぽいおかっぱ頭。切りそろえた前髪の中からのぞく大きな目は、今にも泣き出しそうだった。
「あのさどうかしたの?」
「えっ……」
「何か顔色良くないけど具合でも悪いの?」
「わ、私……」
「ん?」
「筆記……用具が……」
「筆記用具?」
「わ、忘れ……ちゃって……」
 その時は何だそんなことかと拍子抜けした。すぐに余っている、シャープと消しゴムを手渡した。
 だがその些細なことで、彼女の顔は急に明るくなった。少しだけど嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとう石沼(いしぬま)くん……あとでちゃんと返すから」
 クラスでも目立たない彼女は、一学期に北海道からやってきた転校生、藤村優美子(ふじむらゆみこ)。地味で気弱そうで、さほど可愛いと思ったことはなかった。でも俺はこの時「へえ、藤村さんって結構いいかもな」なんて思っていた。笑顔が可愛かったのだ。これが彼女と話をした最初のことだった。
 あとになって彼女は筆記用具を忘れたのではなく、他の女子に隠されたということがわかった。いじめだ。
「お前らいじめなんてダセェ真似するなよ」
「うるさいわね。キモイからちょっと、からかっただけでしょ」
 藤村さんをいじめている現場を目撃して、直接注意したこともあった。やっぱりこういうのは許せない質だった。
「藤村さん一緒に学校行こうぜ」
「う、うん……」
「やっぱり家に閉じこもってないで、学校は行った方がいいと思うぜ。何かあったら俺が助けてやるからさ」
「ありがとう……」
 藤村さんが学校に来なくなった時は、俺が自宅を訪ねて誘った。何か心に葛藤があるのだろうとは思っていた。だから俺は積極的に接するべきだと考えた。
「俺、バスケ部の補欠なんだけどさ、いつか頑張ってレギュラーになろうと思ってるんだ」
「へえ、石沼くんて偉いんだね」
「そうでもないけどさ、藤村さんも頑張ろうぜ」
「う、うん……」
 俺は自分がしていることは良いことだと思っていた。藤村さんも喜んでいると思っていた。でもそれは思い上がりだった……。

「おい石沼、電話鳴ってるぞ」
「は?」
「は、じゃないよお前、電話、電話、はよとれ」
「あ、すんません」
 翌日、明らかな寝不足のまま出社したが、仕事は手につかなかった。理由は眠気より藤村さんのことだ。もう五年も会いに行っていない。
 俺は耐え難い苦しみから、彼女をずっと避けていた。いつか落ち着いたら、彼女とちゃんとお別れしようと思っていた。
 でもそんなことをしているうちに、藤村さんの家族は故郷の北海道へ引っ越すことになり、住んでいる家も取り壊すことになった。
 このままでは中途半端に終わってしまう。それだけは嫌だ。なのに俺はまだ心の準備ができていなかった。
「ねえ一弥、今日晩ご飯一緒に食べない?」
「えっ……」
「駅前に前から行きたいと思ってた、イタリア料理屋があってさぁ」
「あ、ああ……」
「あれ、パスタとか嫌いだったっけ?」
「あ、いや、俺ちょっと用事あってさ……」
「用事ぃ?」
「ああ、親がたまには一緒にメシ食おうなんて言ってきてさ」
「本当ぉ?」
 いかにも怪しいと言いたげな美佳の声。茶髪のショートカット似合ったキツイ目。俺は努めて冷静に続ける。
「本当って何だよ?」
「別にぃ……」
「先約があるんだからしょうがねえだろ」
「わかったわかった。また今度ね」
 俺は美佳に初めて嘘をついた。胃がもたれるような感じがしていい気分じゃない。定時で退社したあと、各駅停車に乗って六駅目で降りた。
 かつて通学路だった道を通り、実家とは逆の静かな住宅街に差し掛かると、急に胸が苦しくなってきた。
 見覚えのある塀。その先を曲がると藤村さんの家が見えるはず。
 近づいていくと、手のひらがどんどん湿っぽくなってきた。何だか怖い、藤村さんの面影に触れるのが……。
「……っ」
 だんだん息苦しくなり足が止まってしまった。すくんだのかもしれない。
 俺は結局その日、藤村さんの家を訪ねることはできなかった。
 避けていたといっても、彼女のことは一日も忘れたことはない。でも行けなかった。

「あのね石沼くん……私ね……」
 あの日藤村さんは、中間テストの時のように、落ち着きがなかった。
 そして昼休み、俺を人気のない校舎裏に誘うと、彼女は震え声でこういった。
「私……石沼くんが……好きなの」
 彼女が俺に対して好意を持っていることは、何となく気づいていた。でもそんな大それたことを、自分から言ってくるとは思わなかった。だから俺はちょっと驚いた。
「お返事聞かせて欲しいの……」
「あ、ああ、じゃあ月曜日にでも」
「あ……あの、できたらもう少し早く」
 その時どうして、彼女が返事を早く要求したのかはわからなかった。
「それじゃあ土曜日、学校終わったら公園で」
 あとで全てを悟った時は、一生後悔することになった。
「西尾が昨日練習中に転んで足首を骨折したんだ……」
 土曜日三時間目の休み時間、部活の先生に呼ばれて、俺はそんな話を聞かされた。それが何を意味しているのかというと、補欠の俺がレギュラーに繰り上げになるということだった。
「土曜日、授業早く終わるから、お前はレギュラーの特別練習に参加しろ。レギュラーはひと味違うからな」
「はい!」
 俺は大いに喜んだ。西尾には悪いけど、いつか報われるものなんだと思った。土曜日といえば藤村さんと約束がある日だった。
 何とか間に合うだろうし、万一少し遅れてもレギュラーの練習といえば、彼女も喜んでくれると思っていた。それが浮かれていた俺の大きな間違いだった。
 約束の土曜日。練習を終えた俺は待ち合わせの公園に少し遅れて行くと、藤村さんはいなかった。
 帰ってしまったのかと思って電話したが誰も出ず、家を訪ねても応答はなかった。だから家族で旅行にでも行ったのだろうと思った。
 俺は早く月曜日にならないかと思っていた。藤村さんにレギュラーになったって伝えたかったのだ。それにくわえて『俺も好きだって』返事をしたかった。そして迎えた月曜日。
「あーみんなに残念な知らせがある。藤村優美子だが土曜日の夜遅くに……」
 最初は俺の知らない誰かの、話をしてるんだと思った。気の毒な話だと思った。でも。
「藤村自殺だってよ」
「マジかよ。怖ぇ」
 死んだのは藤村優美子だった。それも自ら命を絶った。
 あとで知ったことだが。藤村さんに対するいじめは、俺が半端に助けたことで、エスカレートしたらしい。そして遂には金まで要求されて思い詰めた。
 彼女は俺に迷惑をかけないため、全てを隠していたのだ。
「お前等! 何したかわかってるのか! ぶっ殺してやる!!」
 俺は藤村さんをいじめていた女子を、力いっぱい殴りつけた。女だろうが顔面をぼこぼこにした。
 その結果、俺はバスケ部を退部になった。 以来バスケはやっていない。

「石沼です。ちょっと熱があるんで今日は……」
 俺はついに何にもやる気が、起きなくなってしまった。
 会社へ行くような気分じゃなかった。
「ねえ、どうしたの会社休んじゃってさ」
「別に風邪だから心配するなよ……」
 美佳からの電話も適当にあしらっていた。しかしいつまでもごまかせるもんじゃない。
「ねえちょっと本当にどうしたのよ? 無断で休んでるって本当なの? 風邪じゃないの?」
「……」
「ねえ、何とか言いなさいよ一弥」
「いいだろ。どこにも行く気がしねえんだよ」
 心配している美佳に素っ気ない言葉を返した。何も知らない彼女の態度が、苛立ちを募らせる。
「何よそれ仕事で何かあったの?」
「違うよ。別に関係ねえだろ……」
「この間も思ったんだけど一弥なんか変だよ。何かあったんでしょ?」
「別に……」
「もしかして、他に好きな子でもいるんじゃないでしょうね?」
 浮気を疑うときの嫌な口調。やめてくれ。そんなレベルのことじゃないんだ……。
「いねえよそんなの……」
「じゃあどうして急に、こんなになっちゃうのよ」
 美佳はしつこく問いただす。もうどうでもよくなってきてた。
「なあ一緒に住むって話やめようぜ……」
「えっ……」
「そんな気になれないんだ」
「なによそれ? 急にどういうことなのよ?」
「俺にもわからないよ」

 何もせず部屋でふさぎ込む日が続く。でもいたずらに時間が過ぎていくことに、危機感を覚えて俺は外に出た。
 最初は近くを散歩するだけのつもりだった。だけどだんだん、藤村さんの家の方へ行ってしまった。この間は行けなかった彼女の家。でも俺はついに家の前まで来た。
 五年前と特に変わってはいない。洋風の白い門柱は塗装がはげて、所々オレンジ色のさびが浮いていた。この向こうに彼女がいる。
 インターホンのボタンを押そうと思うが、やはり触れることができない。
 押してしまえばもう、逃げることも避けることも、できなくなる。
 また手のひらが汗ばんでくる。やっぱり帰ろうかと思った時、背後に人の気配を感じた。
「何かご用ですか?」
「あっ……」
 中年のおじさんはジッと俺を見る。やがて何か思い出したような顔になった。
「石沼君……かい?」」
 その問いに俺はただ頷いた。おじさんは笑みを浮かべ。
「立派になったね。びっくりしたよ。さあ入りなさい」
 と、一言言ってくれた。
 居間を通りその奥の部屋に案内された。五年振りに彼女を見た時、胸が押しつぶされそうな気持ちになった。藤村さんは、田舎のじいちゃんやばあちゃんが入るような黒縁の額に、物寂しく収まっていた。
 やはりあの日以来、彼女の時は止まってしまったんだ。それはどうしたって悲しい。
 ちゃんと別れるどころか、涙を堪えるのがやっとで、何も話すことはできなかった。
「石沼くん、今でも優美子のことを気にしてるのかい?」
 居間に戻って白いソファに座り、おばさんがコーヒーを持ってきた時、おじさんは聞いてきた。
「はい……」
「どうして?」
「俺があの時、約束に遅れないでちゃんと返事をしていたら、今も藤村さんは生きていたと思います……」
 藤村さんは俺の返事で、気持ちを引き留めようとしていたんだと思う。だから返事を急いで要求したんだ。
「ねえ石沼君。前にも言ったけど優美子のことは、石沼君のせいじゃないわ」
 おばさんが優しくそう言った。だけど俺は。
「でも藤村さんが学校を休みたいのに、俺が無理に誘って……そういうことも、心に負担を与えてたんだと思います」
 もっと彼女の立場になって考えていれば……。そう思うと、本当に自分の無神経な性格が嫌になる。おじさんが、しばらく黙り込んでから口を開いた。
「引っ越すことを決めたのはね、私達がようやく下向きだった顔を、上に上げられたからなんだ」
「えっ……」
「私達がいつまでも下を向いていたら、優美子も私達も、不幸になるために生まれてきたと、認めることになるからね」
「不幸になるために生まれてきたと認める?」
「人間は皆人生を楽しむために、生まれてくるものなんだよ。だから石沼君も、優美子のことを自分のせいだなんて思わないで、これからの人生楽しむことを考えて下さい」
 おじさんの言葉は、娘が自殺したとは思えないほど、前向きで立派だった。一番辛い思いをしてきたはずなのに、よくここまで立ち直れたものだと思った。だけど俺にはそんな達観した考え方はまだ無理だ。
 俺はまだ藤村さんを過去にはできない……。

 その夜、美佳から何度か電話が来たが、例の同棲の話は平行線だった。そのうちらちがあかないと思ったのか、美佳は俺の部屋に押しかけてきた。
「あたしには一弥が必要なのよ。一弥にはあたしは必要ないの?」
「そうじゃねえよ。俺、引っ掛かってることがあるんだ」
「何よそれ? あたしに何か不満でもあるの?」
 美佳は唇をとがらせ俺の顔をのぞき込む。でも俺は何も答えなかった。
「はっきり言いなさいよ。全然わけわかんないわよ」
 苛々するのも無理はない話だった。やっぱり全てを話すしかないだろう。
「俺この間からずっと、藤村さんって女の子のことばかり考えているんだ」
「はぁ?」
「美佳とつきあっている間も、心の中にはずっと藤村さんがいたんだ」
「誰よその女ぁ? やっぱりあんた違うとかいって二股かけてたの?」
 浮気と勘違いして眉をつり上げる美佳。さらに畳みかけてくる。
「この女ったらし!!」
「藤村さんはいじめで自殺したんだよ!」
 俺は思わずかっとなって言い返した。
「えっ、な、自殺?」
「藤村優美子は中学の頃の友達で、俺が好きだった女の子なんだよ!」
「何よそれ……どういうことよ?」
 美佳は小さく口を開け、驚いた顔で俺を見ている。
「藤村さんのおじさんから葉書が来たんだ。家を取り壊して北海道へ引っ越すって……」
 胸の中に冷たいものがこみ上げ、じわじわと広がる。
「何で今頃になってそんなこと?」
「俺いつか藤村さんと、ちゃんと別れようと思ってたんだ。でも辛くて避けてばかりで今まで来ちまって……。藤村さんのことを引きずったまま、お前と一緒に暮らしたら、一生後悔すると思ったんだよ」
 美佳はすっかり硬い表情になっている。
「そんな大事なこと、どうして話してくれなかったのよ。あたしだって、まるで話しのわからない女でもないのに……」
「お前に会う前のことだし、何となく誰にも触れられたくなかったんだ……」
 美佳と一緒に過ごしながらも、藤村さんのことがいつも気になっていた。ずっと後ろ髪を引かれる思いだった。
「そう、そんなことがあったんだ……」
 二人で暗い雰囲気になる。『自殺』と、聞けば誰だってそういうもんだろう。しばらくして美佳が何か思い出したように笑顔になった。
「ねえ一弥。初めてあたしと話した時のこと覚えてる?」
「えっ……」
「その時あたし、会社でみんなから無視されてて、一弥だけは心配して声をかけてくれたよね? だから今度はあたしが一弥を助けたいな」
 美佳は嬉しそうにそういった。きっと俺を元気づけたいのだろう。でも俺は……。
「それが俺の一番悪いところなんだよ。人の気持ちも考えない、自己満足の安っぽい優しさなんだよっ!」
 俺はティッシュの箱を蹴飛ばした。自分がまた嫌いになった。

「ねえ、もう一度話ししたいから、何時でもいいから電話してよね」
 あれから一週間が経過した。もう美佳からの電話には出なくなっていた。会社の方は休職扱いになっている。
 美佳が一生懸命になればなるほど、俺は一人になりたいと思うようになった。
「あいつもあきらめが悪いな……」
 今日何度目かの着信。あまりにしつこいので、携帯を開いて見ると、藤村康夫と表示されていた。
「これ引っ越しの準備をしていて、優美子の部屋から見つかったんだ」
 藤村さんのおじさんに呼ばれて、再び家を訪ねると、古びた大学ノートを手渡された。表にはボールペンでDiaryとだけ書かれている。俺は覚悟を決めてそれを開いてみた。
『五月二十一日晴れ・今日も石沼くんと一緒に学校へ行った。石沼くんと一緒だと心が疲れない。いじめられても頑張れそう』
『六月五日曇り・石沼くんが誘ってくれるから、何とか学校へ行くことができる。私だけだったらとても無理。本当に嬉しい』
『六月二十日雨・石沼くんと一緒にいるのは楽しい、もっと一緒にいたい。でももうお金が用意できない。お母さんに怒られたから、もうお財布から盗んだりできない。石沼くんに迷惑はかけたくない。あのお返事を聞いたら私は死にます。皆さんごめんなさい』
 俺は唇を噛みしめながら日記を閉じた。これを読んだ限りでは、藤村さんは俺が返事をしても、死ぬつもりだったらしい。それに俺のしていたことは、良く思っていたようだ。恐らく本心だろう。
 でもそれがどうした? 結局は自殺したんだぞ。心はまるで晴れなかった。
「ありがとうね石沼君。優美子と仲良くしてくれて」
「い、いえ……」
「優美子が死んだあとも、こんなに気にかけてくれて、そういう気持ちが、私達にとってどんなに支えになったかわからないよ」
 おじさん達は穏やかな表情だった。でも俺は藤村さんが自殺した直後のように悲しかった。おじさんが俺の肩に優しく手を置くと、溜まってた感情が雫となってこぼれ落ちた。

 帰り道、重い足取りでアパートの近くまでたどり着くと、俺の部屋に明かりがついているのが見えた。
 ドアを開けて玄関に入ると見覚えのある靴があった。俺は乱暴に靴を脱ぎ捨てて、台所兼居間に行った。
「何してるんだよお前は?」
「いいじゃん別に、あたし今日からここに住むのよ」
 美佳はベッドに座ったまま、当たり前のようにそういった。足下には車輪のついた旅行鞄が置いてある。
 俺はため息を吐きつつ床に腰を下ろした。
「何を勝手なことを……」
「死んだ子のことが忘れられないのは、仕方がないと思うけどさ、あたしは慰めることも許されないの?」
「えっ」
「臭いドラマじゃないけど、慰め合って生きていくのも人間じゃない? だから一緒にいようよ」
 美佳は優しく言い聞かせるように言った。 でもやっぱり俺は。
「理由はうまく説明できないけど、嫌なんだよ……」
 あの時いなかった人間に慰められると、反って心を土足で、踏みにじられるような気がする。だからほっといて欲しい。
「水くさいよ一弥。あたしは何でも話せる仲だと思ってたのに……エッチな話だってできて、嬉しいと思ってたのにさ」
 美佳は少し拗ねたように言う。悪いと思うが今の俺にかける言葉はない。
「結婚まで迫ったりしないから、取りあえず一緒にいようよ。このままじゃ一弥病気になっちゃうわよ」
「もう病気かもな……」
「あたし自信もっていえるわよ。いじめられてる子を助けたり、元気づけたり、それってどう考えても良いことだって」
「それはもういいよ……」
「よくないわよ! あたしにとっては重大よ!」
 俺の投げやりな態度に腹が立ったのか、美佳は声を大きくすると、ベッドから降りて俺の前に座った。まっすぐ俺を見据える。
「な、何んだよ?」
「だってあたし、一弥のそういうところに惚れたんだよ……」
 美佳はそういって優しく笑った。
「美佳……」
 何を言われても無駄だと思っていた。でも今、心が揺れていた。俺はこの安っぽい優しさを持ったまま、前に進んでいいのだろうか。後悔しないだろうか。どう思う藤村さん?

 あれから季節が流れ再び迎えた夏。
 昼食を終えた昼休みに、美佳と会社の中庭で話をしていた。
「今日定時で帰れそう?」
「ああ、ここんとこ暇だから、大丈夫だ」
「じゃあまた帰りにね」
「あんまり無理するなよ」
 美佳が手を振って一足早く社屋の中に消えた。入れ替わり同じ課の同僚がやってくる。
「いいよなぁ、お前ら結婚するんだって?」
「ああ、まあな……」
 結局美佳は俺の部屋に、完全に住み着いてしまった。結婚なんて迫らないなんて言ってたけど、できちまったんじゃしょうがない。近頃はどっちに似た子が生まれてくるのか、ちょっと楽しみになっている。
「俺も居座られても何でもいいから、彼女くらい欲しいわな……さて腹ごなしに行くわ」
「待てよ」
 俺は同僚の背中を引き留めた。
「あん? 石沼バスケなんかやるの?」
「悪いかよ」
 立ち上がって尻をほろった。すでに中庭の端っこには、食事を終えた連中が集まっていた。
「どうした石沼?」
「いやあいつも誘うわ……」
「あー、やめとけやめとけ、仕事でドジばっかりのやつなんて何やってもだめだろ」
 同僚に嫌そうな顔でそういわれたが、やっぱりほっとけなかった。木陰で暗い顔して時間をつぶしている、やつのところへ行く。
「なあ一緒にバスケやろうや」
「えっ、僕?」
「ああ、今のうちから運動しとかないと、いい年になったら腹出るぜ?」
「でもバスケなんてやったことないし」
「まあ、遊びだから気楽に構えてさ」
「そ、そっか……じゃあ」
 また俺の安っぽい優しさをやっちまった。まあそれが取り柄らしいんだけど……。
 苦笑しつつ中庭の端っこへ行く。
「おーい石沼こっちは準備いいぞ」
「ああ、わかった」
 安物のバスケットボールを手渡されてふと思った。
 いつ頃からだろう。藤村さんのことを考えても、胸の奥があまり痛まなくなったのは……。
 美佳と暮らすようになってから自然と笑うことが多くなり、あの胸の痛みを感じることは少なくなっていった。
 以前なら藤村さんに対する気持ちが、こんな風に変わることは、とんでもないことだと思っていた。酷いことだと思っていた。
 でも今は……。
 どうやらあれほど悩んだ別れというものは、悲しいくらい自然にやってくるものらしい。
「おら、早く来いよー」
 同僚から催促の声がかかり、昼下がりのバスケットボール。
 俺は久しぶりにドリブルして、二、三人抜いた。そして一気にボールを放った。
 ボールは緩やかな放物線を描きゴールへ向かった。でもやがてバーに弾かれ地に落ちた。
--終わり--
★END★
2007. 09. 20  
■タイトル■
死ねない私

■あらすじ■
日々なんの希望も見いだせず、長年に渡って引きこもっている岩崎水奈(いわさきみずな)は、自殺を決意する。しかし何度自殺をしようとしても、踏み切ることができない。原因を探ってゆくうちに、自分にはまだやり残したことがあることに気づく。

☆本編☆
『こんなことで嫌になって辞めるのなら、どこに行っても通用しないよ』
 耳にこびりついた言葉が、心の中に繰り返し響いた。
 私は鋭い刃先で手首を突っつく。
 最初はチクチクするだけだったものが、やがてはっきりとした痛みに変わる。
 刃先が離れると、血管の上の肌にぷうっと赤いふくらみが、いくつもできた。
 こんな私、いやこんな奴、死んでしまえばいい。傷つけるたびに血を見るたびに、そんな気持ちになった。
 自分に対する憎しみが強くなり、興奮してくる。
 今度は突くのを止めて、刃先をぐっと手首に押しつけた。鋭い痛みを断続的に感じる。
 もっと強く突き刺して、そのまま引き裂いてしまえば、脈が切断され大量出血するだろう。
 そして傷ついたその腕を浴槽に沈めていれば、出血が止まらなくなって死に至る。
 もう死のう。私は明確にそう思った。
 だけど……。
「……」
 ふっと気持ちが萎えて、手首からカッターが離れた。
 机の上の漫画用原稿用紙が、血液で汚れないように、ティッシュで手首と刃先を拭った。
 なぜなのかは分からない。死のうと思って手に力を込めた途端、死ぬことと関係のないつまらないことが、脳裏を過ぎったのだ。
 自殺を図るにしてはちゃちな方法だから、雑念が生まれたのだろうか。
 きっとそうだと思う。

 翌日、珍しく朝八時に目が覚めた。
 昨日傷つけた手首は、血が黒く固まってかさぶたになっていた。
「あら水奈、ごはん食べるの?」
 ダイニング入ってきた私に気づいて、お母さんが意外そうな顔をした。
 いつもは昼頃起きるからだろう。私はコクリと頷いて椅子に座った。
「また傷つけてしまったの?」
 目玉焼きとごはんを私の前に置くと、お母さんは急に沈んだ声を出した。
 手首の傷を悲しそうに見つめていた。
 私は俯いたまま箸を取り何も答えなかった。傷つけた理由なんて話したくない。
「おい母さんお茶くれ」
「……っ!」
 ちょうど味噌汁に口をつけたとき、突然あの人がリビングに入ってきた。紺のスーツ姿のまま、ソファにドカッと座った。
 チラッとこちらの方を見たが、私はすぐに目を逸らした。
 とっくに会社に行ったと思っていたのに、どうしてまだ居るのよ。
 嫌悪感と拒否反応が同時にこみ上げ、味噌汁の味も分からなくなった。
「お父さんね、今日少し出勤時間遅くていいらしいのよ」
「そう……」
 聞いてもいないのに、今あの人が居る理由をお母さんが話した。
 恐らく私の顔を見て、不機嫌さに気づいたのだろう。いつもこんな感じだ。
 私が気分を損ねて、心の病が悪化しないか、それを気にしているのだ。
「母さんちょっと……」
 あの人がまたお母さんを呼んだ。そして声を潜めて話し始めた。
「大丈夫よ。水奈だってそのぐらいなら……」
 恐らく私がアルバイトを辞めたことについて、話しているのだと思う。
 どうせすぐに辞めるダメな人間だとか、そういうことを言っているに決まってるんだ。
 もうあの人とは四年間口を利いていない。
 『何が病気だ! お前は怠けてるだけだ!』
 全く学校へ行かなくなり、代わりに精神科へ通うようになった私を、あの人は何度も怒鳴りつけた。
 若い頃から倒れるまで働くがモットーのあの人には、心の病などというものはダメな人間の言い訳にしか、聞こえないのだろう。
 でも私が目の前で手首を切って以来、あの人は私に直接もの言ったりすることはなくなった。 きっと怖くなったんだと思う。こいつは死ぬかもしれない。いつかとんでもないことを、やらかすかもしれないと……。
 何にしても、怯えたようなあの人を見ると私は清々する。

『水奈キモーイ!』
『臭うから学校来ないでよバーカ』
 初めていじめに遭ったのは、中学二年のときだった。
 きっかけは制服が樟脳臭いとか、お下げ髪がダサイとか些細なことだった。でもそれはあっという間にエスカレートしていった。
 ある日遂に耐えかねて、お母さんの勧めで担任の先生に相談してみた。でも今度はチクったとかで、いじめは前にも増して酷くなった。
 私は鬱病になり学校へ行かなくなった。心の病の苦しみを、自分を傷つけることによって癒すようになっていた。
 進学することも就職することもなく、永遠と続く引きこもり生活。学校の代わりに通った精神科。手首には数え切れないほどの、切り傷の痕がある。
 苦しみながら絶望しながら、何とか普通になりたいと思って、最近初めてアルバイトに挑戦してみた。
 でも……。
『だいたい四年も何もしないでいたなんて、親に甘えてただけだろ……』
 ドジばかりで怒られて半月と持たなかった。
 自分のやりたい仕事ではなかった。何をしたらいいのか分からないのだ。
 どちらにしても、私のような病気持ちの人間が生きていけるほど、世の中は甘くないんだ。
 この世界にはやりたいことも、自分の居場所もない。
 散々苦しみ抜いた。もうたくさんだ、終わりにしたい。そう思っても罰は当たらないと思う。

 その夜。いつものようにあの人が寝室へ引き上げたあと、私は入れ替わりダイニングで夕食を取っていた。
 食器を洗い終えたお母さんが、お茶を持って私の向かいに座った。
「あのね明日からなんだけど、お父さんと旅行に行こうと思ってるの……」
「旅行?」
「うん。ちょっと遠いから泊まりにがけになるんだけど……」
 私は少し意外だなと思っていた。
 夫婦二人だけで出かけるのなんて、初めてのことだと思う。
 今までは私のことで手がかかっていたから、そんな余裕はなかったのだろうけど……。
「水奈の通院も週二回になったし、どんどん良くなってるようだから、安心して出かけられるかなと思って……」
「そうかな……」
 機嫌を取るような言い方をするお母さんに対して、私は不満げな声を漏らした。
 何が良くなっているだ。そんなはずはない。
 確かに精神科への通院は減ったけど、また手首を切ったし、それに今だって死のうと考えているんだ……。
 私がこんな状態でも、お母さんは楽しむことを考えているのか。
 心の中に寂しげな空気が漂い始め、胸がキリキリと痛み出した。
「いいかしら? 家のこと水奈一人でも大丈夫よね」
 何とかうんと言って欲しい。お母さんはそんな様子だった。
 だんだんいじけた気持ちになってきた。
 偶には旅行ぐらい行かないと、やっていけないよね。
 精神病の娘の親なんて……。
 別に同情が欲しい訳じゃない……。だけど私は寂しかった。
「分かった……別に食事だって適当にするから勝手に行って……」
「そうじゃあ安心して行ってくるわね」
 私はお母さんの希望通り頷いた。
 いい機会だ。今度こそ死のう。もっと確実な方法で……。
 嬉しそうに笑みを浮かべるお母さんの前で、私はそう心に決めていた。

 浅い眠りを繰り返した。夢を見たけど内容は覚えていない。
 起きてみるとすでに家の中には人気がなく、ダイニングテーブルの上に、朝ご飯と手紙が置いてあった。
『卵焼きと味噌汁は温めて下さい』
 スーパーのチラシの裏にそう書いてあった。他には何も書いてない。いつも置き手紙はこんな内容だ。
 お母さんやあの人は、私がこれから死のうとするなんて、全く想像していないだろう。
 楽しい旅行から帰ってきて、私の自殺の知らせを受けたら、どんな気持ちになるのだろうか? やっぱり泣いて悲しむのか? 家族に自殺者が出たことを隠すのに、必死になるのか? 互い罵り合って離婚して、そのまま家庭崩壊なのか……。
「そんなことどうでもいいか……」
 私は食事を手早く片付け、自分の部屋に戻った。
 遺書を書こうかと一度机に向かったが、書く気になれなかった。
 私が死ぬのなんて、今までのことを考えれば、大して珍しいことじゃない。
 学校でいじめられてひきこもりになって、何とか世の中に出てみようと思ったけど、すぐに挫折した。
 そんな人間が勝手に死んだからって、気にもとめないだろう。
 だから遺書なんて必要がないと思った。
 出ないと怪しまれるし、携帯電話も持って行こうか。
 そう思って腕を伸ばしたとき、隣に積んであったDVDに手がぶつかった。
「あっ……」
 プラスチックのパッケージが、バラバラと足下に散らばる。そのうちの一つを拾い上げた。
 『虹の向こうの街』私が中学生の頃、流行ったアニメ。
 この部屋でずっと一人だった私を、唯一慰めてくれたもの。
 私を夢の世界へ、何度も連れて行ってくれたもの……。
 自分も描いてみたいと思ったけど、そんなの現実味のない夢。
 現に投稿した漫画も、賞に入賞することはなかった。
 もういい。
 最初からダメなんだ。
 私なんてそもそも、世の中の基準に満たない人間なんだから……。
 私は崩れたDVDを元に戻して家を出た。

 最上階、十七階の踊り場。
 私は辺りを見回し、誰もいないことを確認すると、アルミ製の柵の前まで行った。
「風……結構強いな……」
 地上に止めてある車も自転車も、現実味がないくらい小さく見える。
 ここから飛び降りれば間違いなく死ねる。
 ものすごいスピードで落下して、アスファルトに叩き付けられて即死だ。
「……っ」
 アルミの柵をつかむ手にグッと力を入れた。
 今足をかけたら、きっとそのまま向こうへ行ける。
 何となく分かる。勢いで行けると思う。
 だんだん周りの音が聞こえなくなってきた。
 私は行くんだ……もうすぐ行く……。
「あ……」
 白みかけた意識の中を、不意に何かが横切った。私はハッと我に返った。
 漫画のこと。
 机の上に置いたままにして来た、私の漫画ことだ。
 もう少しストーリーに凝って、絵を丁寧に描けば……。それらを満たせばいい評価になったんじゃないだろうか……。だけどそんなこと、いつも思ってることだし……。
 私はそこで思考を止めた。
 今の私には関係ないことだった。どうせその程度の心がけじゃ、プロになんかなれないんだし……。
 もう飛び降りようとする意志が薄れていた。
 公園で遊んでいる子供とそのお母さんの姿が、豆粒のように見える。
 飛び降り自殺といえば、偶然通りがかった人が、巻き添えになる事件がある。
 関係のない人を巻き込むのは良くない。
 万が一ということもある。だからここで死ぬのをやめるんだ。
 私は来た道を引き返し、自分にそう言い聞かせていた。

 マンションから歩いて十分。駅に着いた。
 休日のせいか家族連れとかカップルとかで、人は多かった。
 私はホームのベンチに座っていた。もちろん電車に乗って、どこかへ遊びに行こうと思ってるわけじゃない。
 ホームとは対照的に嘘のように静かな線路。
 私が電車に飛び込んだら、私の身体は車両の全面に当たって跳ね飛ばされ、全身を強く打って即死なのか。
 それとも車輪に轢かれて五体を切断され、バラバラになるのか……。
「……っ」
 ふと気づけば、さっきと同じようなことを考えていた。
 飛び込んだ瞬間のことを考えても、意味なんかないって分かりきってるのに……。
『まもなく二番線に、普通新宿方面行きの電車が参ります。危ないですから黄色い線の内側まで、お下がり下さい……』
 女の人の声でアナウンスが流れた。私はそれをきっかけに、ゆっくりと立ち上がった。
 黄色い線まで歩いてみる。
 一度飛んでしまえば、飛び降り自殺よりは早く意識を失えるはず。
 まだ姿は見えないけど、電車のゴーッという音が聞こえ、鼓動が早くなる。
「っ……」
 ここからジャンプすれば、ちょうど入ってきた電車に撥ねられる。
 私はぐっと踏ん張って、飛び込む体勢を作ろうとする。
「えっ……」
 そのとき足下で何か音がした。
 艶のある四角いプラスチック。私の携帯電話が落ちていた。
 慌てて拾い上げると、ストラップについていた二つの人形が、手の平の端に触れた。
「あっ……」
 アニメ『虹の向こうの街』ピンクの髪のミルとブルーの髪のラグ。ディフォルメされた可愛らしい人形。
 その大きくて無垢な瞳を見たとき、なぜか切なくなって胸がギュッと締め付けられた。 私は咄嗟に横を向いて、何も考えないようにした。目頭が熱くなってきたのだ。
 とても大切なものと、別れなければならない気持ちになっていた。それはアニメのキャラクターとかではなく、アニメや漫画そのものとの別れだ。
 今更どうして、こんな気持ちになるのよ……。
 こんなもの今の私に、何の意味もないはずなのに……。
 予想外の心の戸惑い。しかしそんなことには関係なく、電車はすごい音を立てて、ホームに滑り込んでくる。
 気づけば目の前を金属の壁が横切り、その風圧で前髪が揺れていた。
「ねえあなたどうかしたの?」
「えっ……」
 私の様子が、よほどおかしく見えたのだろうか。
 うちのお母さんくらいのおばさんが、心配そうな顔をして私をのぞき込んでいた。
 もう電車は完全に停車してドアが開き、中から乗客が降りてきていた。
「どこか具合でも悪いの?」
「何でも……ない……です」
 乗り降りする客で混雑する中、私は呆然と立ちつくし、俯いたまま首を振っていた。
 誰とも話なんかしたくない。第一一言で語り尽くせることじゃない。
 アルバイトをしてたとき、言われたことが引き金だといっても、結局は何年も苦しんできた蓄積なのだ。
 見ず知らずの人に話せるはずがない。話したところで、今までのこと全てが解決するわけじゃない。
「あ、ちょっと……」
 私はおばさんに背中を向けて、階段を駆け上がった。
 死ぬと決めたのにどうして……。
 自分でも理解できない自分の気持ち。私は焦燥感に苛まれ、居ても立ってもいられなくなった。

「はぁ……はぁ……」
 息を切らして自宅に帰ってきた。
 ドアに鍵をかけ靴を脱ぎ捨てると、廊下のクローゼットを開けて、アレを探した。
 確かここにあったはずと思っていたが、すぐには見つからず次第にイライラしていった。
 焦燥は強くなる一方だった。追い詰められたような気持ちになっていた。
 あの人が使っている軍手や園芸用のシャベルが出てきて、その辺に叩き付けた。
「……っ」
 程なくして段ボールの陰から、白くてつるつるしたアレが出てきた。
 ビニール製の荷造り紐。
 焦り続けていた心が、ほんの少しだけ落ち着きを取り戻した。
 この方法なら……。
 確か脳への血流が悪くなって、意識を失うのに十秒くらい、その後心肺停止まで数分だと聞いたことがある。
 たった十秒黙っていればいいんだ。
 小さな輪を作って首にかけ、余った部分をドアノブに結ぶ。
 ドアに寄りかかり目をつぶって、身体を脱力させた。
「んっ……くっ」
 ロープがじわじわと喉に食い込む。次第に息苦しくなってきた。
 顔が熱を持ち、ふくらんでいるような感覚に襲われた。
 私は死ぬんだ。
 何も考えないで十秒過ごせば、つまらない私の十八年間が終わり、希望のない未来が完全に絶たれる……。
「……うっ」
 気が遠くなり初めて死を予感したとき、身体がビクンと震えた。
 霞んだ意識の中で、お下げ髪の頃の私が嬉しそうに笑っていた。それは初めて漫画を描き上げた日のことだ。続いて月例漫画大賞の応募欄を見て、投稿を決心した私の姿が浮かび上がった。
 私の気持ちが生と死の狭間から、現実に戻ってゆく。
 またダメだ。そう実感した。
「何で……死ねないのよ!」
 荷造り紐と首の間に指を入れ、掠れた声で叫んだ。
 自分の無様な声を自分の耳で聞いて、またやりきれない気持ちになった。
 死のうと思っているのに、せっかく死ねそうだったのに、どうして自分の描いたへたくそな漫画のことなんて考えるのよ!
 そんなこと考えたところで、何にもならないのに……苦しいだけなのに……。
 私は行き詰まってしまったことを、認めざろをえなかった。今までずっと保っていた心の均衡が、崩れ出すのを感じていた。
「ううっ……」
 壁にもたれかかったまま、横にずれるようにして力なく床に倒れた。
 感情を抑えきれず、冷たいフローリングに頬を押し当てたまま、嗚咽を漏らして泣いた。
 薄々気づいてはいた。やり方がまずいとか人を巻き込むとか、理由をつけて結局は死ねないでいる自分のことを……。
 死にきれないことを、認めてしまうことが怖かった。
 死ねないと認めた瞬間から、待っているのは発狂しそうなほどの、心の苦しみだけなのだ。
 現に今、形容のできない心の痛みが、激しく私を苦しめている。
 せめて一時でもいいから、意識がなくなってくれたら……。
 せっぱ詰まって懇願していると、チャイムの音が唐突に鳴り響いた。

「あ、水奈ちゃん。父さんと母さんいるかい?」
「えっ……」
 鍵を外しドアを開けると、スーパーの袋を持った中年のおじさんが立っていた。
 少し薄くなった髪、真っ黒に日焼けした顔と黒縁の眼鏡。
 親戚の勝巳おじさんだった。
「いないのかい?」
「あ、あの……今はちょっと……」
 なんだか急に現実へ引き戻された気がして、うまく言葉が出て来なかった。
「あ、そうなんだ。これうちの畑でとれたやつだから煮物にでもして食べてよ」
「は、はぁ……」
 おかしな返事をしながら、スーパーの袋に入ったキャベツやにんじんを受け取った。
 いつも勝巳おじさんが来るときは、何かしらおみやげを持ってきてくれる。
「来週じいちゃんの法事だから、それで会場どこ借りようかと思って、相談したかったんだ」
「そうだったんですか……」
 法事。もうそんなに経ったんだ。
 ようやく思考がまともになってきた。
 丈夫で病気知らず。いつも冗談ばかり言っていたおじいちゃんが亡くなったのは、去年の夏だった。
 病院ではなく自宅での突然の死だった。
「それにしても驚いたよなじいちゃんのこと」
「はい……」
「なんか気が抜けたような、急に元気がなくったようなそんな感じだったから、それがサインだったのかな……」
 おじいちゃんが死ぬ三ヶ月前、私はお母さんと一緒に、おじいちゃんの家に遊びに行っていた。
 おじいちゃんは縁側に座って、ぼんやりした顔をしてこう言った。
『じいちゃんみんな好きなこと、やり尽くしたっていうかな……力が出ないんだよ……』
 年だから認知症なんじゃないかって、親戚のおばさんが言っていた。でも私にはそうは見えなかった。
 ただ悲しそうではなかったけど、寂しそうに見えた。
 それが私が見た、おじいちゃんの最後の姿だった。
「あの……」
「ん?」
「おじいちゃん……好きなこと全部やり尽くしたって言ってました……」
「やり尽くした?」
「はい……」
「そうか……あの年まで生きると、そういうときが、来るのかもしれないなぁ……人間好きなこと全部やり尽くしたとき、死んでいくのかもしれないなぁ……」
 勝巳おじさんはしみじみとそう言った。
 私は改めて考えていた。自分はなぜ死ねなかったのだろうかと。
 勇気がないから? 弱虫だから? 死ぬのが怖いから?
 どれも当てはまるようで、当てはまらない気がする。
 死のうと思ってはいたけど、私の心は死にゆく者の心になれなかった。
 この世に未練があるからなのだろうか……。
 もしとかするとおじいちゃんのように、好きなことをやり尽くしていないからなのか。
 でも私に好きなことなんてそんなもの……。
 私は勝巳おじさんが帰ったあと、部屋に戻った。
 今の苦しみを和らげる方法があるとしたら、何かに没頭して思考を別の方向へ向けること……。
 机の上には描きかけの漫画の原稿が、手首を切ったときと変わらず、置いたままになっていた。

 次の日の夜十九時頃、お母さん達が帰ってきた。
 いろいろおみやげを買ってきたから、あとでおいでよとお母さんは言っていた。
 私はいつものように、あの人が寝静まった頃を見計らってリビングへ行った。
「あっ……」
 てっきり寝たと思っていたのに、あの人はまだリビングのソファに座っていた。
 私は瞬間的に不機嫌になり、すぐに踵を返した。
「待って水奈」
 背中にそう声をかけられ私は足を止めた。
 振り返ってムスッとした顔を向ける。
「……なにお母さん?」
 お母さんは何かを促すように、あの人を肘で突っついた。
 あの人が私の方を見たので、私はあからさまに目を逸らした。
「あ、あのな水奈……」
「……っ」
「実は精神科の武田先生と相談したんだけどな、今度熱海に引っ越そうかって思ってるんだ……」
「……!」
 一瞬誰に何を言ってるのかと思った。
 そのぐらい驚いた。
 ずっと私に話しかけることのなかったあの人が、私に向かって話していた。
 確かに話していた。
「向こうは空気も良くてのんびりしてるから、東京で暮らすより、お前の心に負担がかからないと思ってな。それで今回ちょっと見てきたってわけなんだ……」
「……」
「無理にアルバイトすることもないし、武田先生も是非って勧めてくれてな……父さん仕事は新幹線で通えばいいし」
「水奈さえよければ来年中にでもと、考えているのよ」
 お母さんがあの人を助けるように続けた。
 そう……。
 そうだったの、それで急に旅行なんて……。
 あの人はあの人なりに、私のことを考えていたのか……。そう思うと、ちょっと悔しい気持ちになった。
 もちろん全てを許せる気にはなれない。でもほんの僅かだけど、病気のことを理解してくれていたと認めるしかない。
「私……」
「ん?」
「私まだ東京に残って、やってみたいことがあるの……」
「やってみたいこと?」
「私の好きなこと限界までやってみたいの……」
「えっ!?」
 あの人とお母さんが、小さく口を開けたまま、顔を見合わせていた。
 無理もない。四年間も引きこもっていた私が、初めて積極的に何かをやってみたいと、言ったのだから。
 私の頭に何度も浮かんで、私をこの世にとどまらせたもの。
 それは漫画を描くこと。もっと漫画を描いて雑誌に投稿して、自分の力を試してみたいということ。
 私が死ねなかったのは、その願望を捨てきることができなかったからだ。
 もう腕が動かなくなるまで、好きな漫画を描いてみよう。
 それがいつかプロになれるのか、現実の厳しさを知って挫折することになるのかは分からない。アルバイトをしたときの、何倍もの困難が待ち受けているかもしれない。それでも構わないから、私はやってみようと思っていた。
★END★
2007. 09. 20  
■タイトル■
思いのままに生きてみたくて

■あらすじ■
目立つことを恐れて、毎日を地味に過ごす木村佳奈子。そんな彼女が変わり者の谷中祐一に、恋心を抱く。祐一は周囲の目を気にすることなく、自由奔放に生きる男の子。二人は次第に打ち解け、祐一は学校で佳奈子に、話しかけるようになる。しかし佳奈子は、クラスメートの目を気にして、気のない態度を取ってしまう。

☆本編☆
タイトル『思いのままに生きてみたくて』
「作文やってきた?」
「ああ、夜中の一時までかかったけどさ」
 三時間目の休み時間、クラスのみんなが楽しそうに談笑している中で、私はため息ばかり吐いていた。
 思うとおりにものを言ったり行動したりすれば、みんなに悪口言われるに決ってる。
 私が人目を気にしない、強い人間になればいいんだろうけど、そんなことできれば最初から苦労しない……。
 進歩のない自問自答を繰り返す私。そんな私の耳に、また彼のうわさ話が聞こえてきた。
「そういえば谷中のやつ、また学校に来なくなったな」
「どうせただのきまぐれだったんだろ?」
「ホント何考えてるのか、さっぱり分からないなぁ」
「まあ、あんまり関わらない方がいいんじゃない。俺達だって何されるか分からないぜ」
 誰もが彼のことを良く言わない。知らないから尚更なんだと思う。
 でも私は知っている。彼がみんなの言うような人じゃないことを……。私が彼を学校以外の場所で見たのは、六月初旬のことだった。
「いい天気……」
 その日は暑くもない寒くもない、丁度良いぽかぽか陽気。私は子供の頃からの喘息で病院へ行ったあと、森林公園を通って学校へ向かっていた。
 ベビーカーを押す若いお母さんとすれ違い、可愛らしい鳥のさえずりが聞こえる。長閑な空気が漂っていた。このまま休めたらいいのに……なんて思っていたそのとき……。
「ほら食べろ」
 不意に遊歩道から外れた森の中から、声が聞こえて私は足を止めた。
 何だろうかと思って見てみると、同じ学校の制服をきた男子生徒が、木の下に座っていた。
「ごちそうだぞ……おっ、お前結構食欲あるな餓えてたのか?」
 パンくずを手に乗せて、それを小鳥に与える一人の男子生徒。片目が隠れるほどの長い前髪に、すらりと伸びた長い脚。悪戯っぽい笑顔。
「あれは確か……」
 すぐには思い出せなかったけど、顔をよく見て思いだした。
 同じクラスの谷中祐一くんだった。
 谷中くんと言えば学校へはあまり来ない、印象の薄い男の子。偶に来たかと思えば机につっぷして居眠り、そしていつのまにか勝手に帰ってしまう。
 空手の初段を持っていて、ケンカが強いって聞いたこともある。だから何となく怖くて、不良みたいなイメージを持っている。
 でも……。
「痛ててっ、パンはまだまだあるから手までかじるなよ」
 みんなのうわさや学校での彼と比べると、ずいぶん違って見えた。何だかすごく生き生きして楽しそう。それに鳥たちを見る目は優しかった。
 彼は動物が好きなのかもしれない。そう言う人ってよくいる。
 もしそうだとしたら、怖い人ではないと思うけど……と、そこまで考えたとき、学校へ行く途中だったことを思い出した。
「もう行かなくちゃ」
 私はその場を立ち去り学校へ向かった。
 これが全ての始まりだった。

 谷中くんを見た翌日。
「谷中……谷中はどうした?」
「欠席ですよ昨日から」
「ったくまたか……」
 呆れたような顔をして、頭を掻く担任の先生。男子の何人かが、吹き出すように小声で笑っていた。
 私は空席になっている谷中くんの席を見て、昨日のことを思い出していた。
 あれは何だったんだろう……。やっぱり谷中くんと言えば、不登校ぎみでケンカが強い怖い人。
 だけど……。
 私は彼のことが気になり始めていた。

 それから十日ほどたったの六月の中頃。
 「ごほっ……ごほっ……」
 私は咳が酷くなってまた病院へ行っていた。そして学校へ向かう途中、森林公園を歩いていた。
「あ……」
 もしかしてまた谷中くんが居たりしてと、心の片隅で思っていると、あっさり彼は居た。
 この間と同じ木の下に彼は座っていた。
 でもちょっと様子がおかしかった。
「えっ……」
 目を瞑っていた。心地好い日差しの中で、谷中くんは眠っていた。
 驚いたことに彼が眠っているのにも拘わらず、鳥やリス達が周りに集まって来ていた。
 みんな彼にすっかり懐いているようだった。野生の動物なのに。
 不思議な光景だった。まるで映画のワンシーンのようだった。そんなことを思いながら、軽く足を踏み出そうとしたとき……。
「ごほっ……ごほっ……」
 思わず咳を堪えることができなかった。
 次の瞬間。
「あっ、待って!」
 鳥やリス達は危険を察知したように、一斉に逃げ出してしまった。
 脅かすつもりなんてなかったんだけど、そんなこと動物たちに分かるはずもない。
 間もなく谷中くんの瞼が動いた。
「う、うーん」
「あ……」
 私は離れるタイミングを、失ってしまっていた。寝起きでぼんやりした谷中くんの目が、私を捉える。
「誰だアンタ?」
「あ、あの……私」
「ん……?」
 谷中くんは私の顔をジッと覗き込んだ。
 私は名乗りづらくてもじもじしてしまう。
「えっと……」
「あ、何だ同じクラスの木村か」
 少しだけ考えたようだったけど、谷中くんは割と簡単に私の名を口にした。
 たまにしか学校へ来ないのに、私のことなんかよく覚えていたなぁと、ちょっと意外に感じた。
「お前もサボってるのか?」
「わ、私は病院へ行ったあとだから……その……これから学校へ行くから……」
 否定した声が上擦っていた。
 もしクラスのみんなに伝わって、誤解されたらと思うと怖かったのだ。非難されていじめられるに決まってるもの。
「どこか悪いのか?」
「喘息があって……ごほっ……それで」
「ふーん大変だな」
「だからあの、私はサボリじゃ」
「ははっ、分かってるよ。別にチクったりしないから安心しろよ」
 谷中くんは笑って言った。
 私はようやく安堵した。
「俺はここでお勉強するために、来てるんだけど」
「お勉強?」
「コイツだよ」
 谷中くんは傍らに重ねてあった文庫本を、ポンっと叩いた。何かの小説らしい。
 この間も木陰で読書しながら、鳥たちと戯れていたということだろうか。
 本当にまるでイメージの違う谷中くん。
「空気もいいし、ここで小説読むの最高なんだ。飽きたら鳥やらリスと遊べばいいし、疲れたら昼寝すればいいしさ……」
 学校に来ないでこうしていることが、良いのか悪いのか分からないけど、羨ましいと思った。
 私はこんなに人の目を気にせず、自由奔放に行動することはできない。
 だって怖い。思いのままに行動したり、ものを言ったりして、非難されるのが怖い。いじめられるのが怖い。
 現に谷中くんだっていつも、陰口を叩かれている。私はそんなのとても耐えられない。それなら自分の意思を押し殺す方が、ずっとマシだ。
「先生とかクラスの人に、何か言われても平気なの?」
「別にどうってことないよ。俺は気にしないね」
 谷中くんは空を見上げ、清々しそうに目を細めた。本当に気にしていないようだ。
「そういえばアイツらどこいったんだろ?」
「あいつら?」
「ああ、鳥やらリスのことだよ。確か昼寝する前は近くにいたんだけど……」
 谷中くんは辺りをきょろきょろと見回す。
「ごめんなさい私が咳をしたから……ごほっ……逃げちゃって」
「別に大丈夫だよ。またすぐ寄ってくるから」
「えっ、本当?」
「本当だよ。見てろよ」
「う、うん……」
 そんなのとても信じられないと思っていた。第一私も居るし。
 だけどしばらくすると一匹のリスが、木の陰から様子を伺うように、ひょこっと顔を出した。
「う、うそ……」
 そろそろと谷中くんの足下に近づいてきた。
「ほらな言ったとおりだろ? 俺、人間には好かれないけど、昔から動物には好かれんだよなぁ……はははっ」
 谷中くんは嬉しそうに笑った。子供みたいなちょっと可愛い笑顔だった。
 もしかしたら谷中くんは、すごく優しい人なのかもしれない。
 私は何だか安心して、彼の隣に腰を下ろしていた。

 翌日。昼食のお弁当を半分まで、食べかけたときだった。まるで特ダネを掴んだ記者のように、一人の男子が教室の中に走り込んできた。
「校舎裏で谷中がケンカだってよ!」
「マジ? おい早く見に行こうぜ」
 谷中くん。その名を聞いて胸がドキッとした。不安というより、心配な気持ちのせいだと思う。
 男子のケンカといったら、きっと口だけじゃなくて、殴り合いになるに決まってるもの。
 私もクラスメイトに交じって教室を出た。
「俺には構わないで下さいよ」
「生意気なんだよ。少しぐらい空手やってるからって、いい気になりやがって」
 校舎裏はものすごい人だかり。かろうじて二人の声が聞こえるだけだった。
 教室の窓から身を乗り出して、見物している人もいた。
 谷中くんどころか全然前が見えないから、私は非常階段に登って上から覗いてみた。
「弱い相手に勝ったぐらいで、いい気にはならないですけどね」
「何だと! 俺達三年が弱いだって?」
 顎を突き出し怒声を上げて、谷中くんを睨みつける三年生。今にも殴りかかりそうな感じだった。
 でも谷中くんは涼しい顔をして、相手を怒らせるようなことばかりいうから、見ている私の方がハラハラして苦しくなってしまう。
「三年生とかそういう問題じゃなくて、格闘技の訓練積んでない人は、俺には勝てませんよ」
「うるせぇ! その落ち着き払ったしゃべり方が、ムカツクんだよこの野郎!」
 ついに三年生が殴りかかった瞬間、私は怖くて目を瞑ってしまった。
 だってその三年生は谷中くんより背が高くて、がっしりした体つきなんだもの。
 でも再び目を開くと、うずくまって顔を押さえていたのは、三年生の方だった。
「なあ俺達の仲間に入れよ?」
 五時間目が始るまでの間、谷中くんの席にクラスの不良達が集まっていた。
「仲間ってなんの仲間だよ?」
「お前がいれば先輩も怖くないし、他の学校でデカイ顔してるやつを、シメることもできるしさぁ」
「俺、群れるのは好きじゃないし、遠慮しとくわ」
 谷中くんはまるで興味なさそうに、そっぽを向いてしまった。
 私は思った。やっぱり彼は変な人でも、怖い人でもない。動物と本が好きな、自由奔放に生きる優しい人なんだと。
 理由はよく分からないけど、彼は私の中でそういう存在になっていた。

 谷中くんのケンカの一件から、一週間が経過したある日。喘息の症状もかなり落ち着いてきた。
 私は病院から学校へ向かう途中、森林公園に寄っては、谷中くんと会うようになっていた。
「あの、これありがとう」
「どうだった?」
「うん、おもしろかったよ」
 谷中くんとの共通の話題は、小説と公園の動物たちのこと。
 実を言うと私は読書は得意な方じゃない。だけど谷中くんが貸してくれた本は、読んでいる。
 何だかとっても大切に読まなきゃって、気持ちになるのだ。
「主人公が苦労の連続だから、最後がジーンと来るんだよな」
「うん、私も感動したよ」
 いじめられっ子の主人公が、一人で世界中を旅して、成長してゆくストーリー。自由に生きる道を選ぶところは、まるで谷中くんみたい。彼は自分を重ねているのかもしれない。
 でも私は飽くまでも、お話しとしてしか見ることができなかった。
 谷中くんや小説の主人公のように、生きられたらいいとは思うけど、それはとても険しい道で、勇気のいることだもの……とても私には……。
「同じ作者のやつ二、三冊持ってきてるから、貸してやるよ」
「うん」
 私は谷中くんから文庫本を受け取った。貸してもらっただけなのに、プレゼントのように感じて嬉しくなった。
 谷中くんが触れた物だと思うと、なぜかドキドキした。
 さっそく本をしまおうと鞄を開けると、足下で何かが動いた。
「きゃっ」
「このリスもすっかり、木村に慣れたみたいだな」
「そうだね……」
 大きな目をしたリスが、首を傾げて私を見上げていた。
 動物たちと柔らかな木漏れ日。爽やかな風。
 病院から学校へ行くまでの僅かな時間だけど、私にとって特別な時間になっていた。
「しかしこんなところ誰かに見られたら、木村もサボりだって思われちまうな」
「えっ……」
「だって早めに病院が終ったんなら、まっすぐ学校へ行ってもいいはずだからな」
「それはでも授業の途中だし……キリが悪いから」
 口ではそう言いながらも、本当は少し違っていた。
 谷中くんがいる間にここに来たかったのだ。サボりにならない範囲でだけど。
「はははっ、木村はすぐマジになるなぁ。大丈夫だよ。もし何かあったら、俺が適当に言いつくろってやるからさ」
「あ、ありがとう」
 からかわれたのに、谷中くんの言葉が嬉しく感じていた。
 誰も知らない二人だけの時間。喘息は苦しいけれど、しばらく病院通いが続けばいいなと思っていた。

 七月に入り、昼夜問わずセミが鳴くようになっていた。
 遂に咳もなくなり通院の必要が無くなった。
 谷中くんとの接点が、なくなってしまうかと思ったが、彼は毎日学校へ来るようになっていた。
「よお、また新しいの買ったんだけど、もう読み終わったから貸してやるよ。コレも結構おもしろかったぜ」
「えっ……う、うん、ありがとう」
 谷中くんは学校でも、私に話しかけてくるようになった。
 それはとても嬉しいんだけど……。
「谷中のやつ、最近ちゃんと学校へ来るようになったよな。どうしたんだろ?」
「さあ……でも木村さんとばかり、しゃべってるわよね」
 好奇に満ちた、クラスメート達の視線が辛かった。
 変なうわさが立てば、非難されるに決まってる。いじめられるに決まってるんだ。
 私はそんなの嫌。だって耐えられないもの。

 私の想いとは裏腹に、谷中くんは頻繁に私の席にやってくるようになっていた。
「木村ぁ」
 私と違って皆の目を気にしている様子はない。でも私は……。
「一緒に昼飯食べようぜ」
「えっ……」
 谷中くんはコンビニのビニール袋を見せて、ニコッと笑った。
 私は胸が苦しくなった。既に二、三人のクラスメイトが、私達の方を見ている。そしてニヤニヤしているのだ。
 ここが教室ではなくて、いつもの森林公園なら、気兼ねなくお話し出来るのに……。
「激辛焼き豚おにぎりって、売ってたんだけどさ、木村も食べてみろよ。結構イケるんだよなコレ」
「あ、あの谷中くん……」
「ん?」
「み、みんながいるから……」
「みんながいるから何?」
「だからその……」
 何と言ったらいいか言葉に困ってしまう。
 下手な言い方をしたら、谷中くんが気を悪くしてしまうから。
「谷中と木村って、何かずいぶん親しげじゃないか?」
「そういえば最近よく話してるもんな」
 また私達のうわさ話をしてる。
 怖い、怖い、やめて。
 いじめられる、いじめられる。
「もしかて付き合ってるんじゃ……」
「……っ!?」
 その言葉に、心臓をギュッと鷲掴みにされたような、衝撃を覚えた。もうだめ、もうこれ以上は……。
 発作のように喉の奥が震えだした。
「おい木村、どうかしたのか? もしかして具合でも……」
「む、向こうへ……行って……」
「えっ?」
「お願いだから向こう行って!」
「木村……」
 苦しかったし怖かった。だから思わず悲鳴のような、大きな声を上げてしまった。
 うわさをしていたクラスメイト達も、驚いて私を見ている。
「わ、分かったよ」
「……っ」
「これ辛すぎるし、やっぱり一人で食べるわ。ははっ、じゃあな」
 酷い言い方をされたのにも拘わらず、谷中くんは笑いながら席に戻っていった。
 平気そうに見えたけど、きっと嫌な気持ちになったんだと思う。だって一瞬、悲しそうな顔してたもの……。
 どうしてこうなっちゃうの? どうして私はこんなに臆病なの?
 心の中にじわじわと自己嫌悪が広がり、やがてそれでいっぱいになった。

「谷中くん」
 授業が終わり、玄関で谷中くんの背中を見つけた私は、声をかけていた。
 一刻も早く謝りたかったのだ。
「あの、さっきは嫌ないい方して……ごめんなさい」
「ん……嫌ないい方って?」
「だから……その……私がお昼を断ったとき」
「ああ、別に気にしてないよ」
 その言葉を聞いても、私は安堵することはできなかった。
 だって谷中くん寂しそうだったから。
「でもさ木村も俺をガラス越しに見てるんだな……クラスの連中の目を気にするってことはさ」
「えっ……」
「ま、俺は変やつだろうから、仕方ないんだけどさ」
「ち、違うよ。私はそんなこと」
「いいんだよ。無理しなくたって……」
 谷中くんは自嘲するような笑みを浮かべた。
 私はそれ以上否定できなかった。
 もちろん谷中くんを、変な人だと思ってるんじゃない。私自身の問題なのだ。ずっとずっと引きずってきた、臆病な私自身の……。

 次の日、谷中くんは学校に来なかった。
 クラスメイトや担任の先生は、いつものことだと思っているのか、気に留めている様子はなかった。
 でも私は昨日のことが、原因じゃないだろうかと思っていた。
 それともやっぱり、ただの気まぐれなのか。
「すいません先生……」
 私は身体の不調を理由に早退した。谷中くんのことを考えると胸が苦しくて、とても授業どころじゃなかったのだ。
 身も心も重くなっていたけど、家に帰る途中、森林公園へ向かって走った。
「はぁ……はぁ」
 昼間なのに薄暗い。そういえば午後から雨だといってた。
 学校に来なかったんだからきっといるはず。
 またあの木の下で、小説を読んでいるに決まってる。『よおっ』て、笑いかけてくれるはず。
 でも……。
「谷中くん……」
 彼はいなかった。公園中どこを捜しても。
 頬にポツリと冷たい雫を感じた。

「あら、もういいの佳奈子?」
「うん、ごちそうさま……」
 その日は家に帰っても、何もする気が起きなかった。食欲も湧かなくて、すぐにベッドに潜り込んだ。
 お母さんは心配してくれたけど、とてもその理由を話す事なんて出来ない。だから私は暗い部屋の中で、一人枕を濡らすしかなかった。私がもっと別の人間に生まれていれば、勇気のある人になれたかもしれないのに……。
 無意味だと分かっていても、ついそんなことを考えてしまう。だって私は弱いんだ。虚しさとやるせなさに、何度も涙が溢れた。

「さて作文の方はできてるんだろうな……」
 先生が入って来て皆がおしゃべりをやめた。
 四時間目。今日は一人一人、作文を読み上げることになっている。
 テーマは『私の好きなこと』
 私は終盤になった頃、先生に呼ばれて黒板の前に立った。
「私の好きなこと、それはテレビを見ながらお茶を飲むことです……」
 私は淡々と作文を読み上げる。
 その内容も目立たなく、当たり障りのないもの。それが一番いいのよ。
「木村さんって地味よね」
「ああ、ほんと存在感薄いよな」
 クラスメイトが小声で話しているのが聞こえた。そうよ私は地味で目立たない。ずっとそうしてきたの。これからもそれは変わりはしないわ。みんなと違うことをして、いじめられるよりは、ずっといいはずだもの……。
 心の中で自虐的な言葉を呟きながら、私のつまらない作文が、文末に差し掛かる。
「えっ……」
 そのとき静まり返った教室の中に、不意に戸の開く音が響いた。
 私を含めたみんながそちらの方を見る。
「お前いま何時だと思ってるんだ?」
「えっと十一時五十二分ってとこっスかね……はははっ、昼飯には間に合いましたね」
 先生の厳しい口調にも拘わらず、悪戯っぽい笑みを浮かべる一人の男子。谷中くんだった。よかった学校に来たんだ……。私は思わず安堵していた。
「こんな時間にきて何考えてるんだか」
「ホントきまぐれよね」
 クラスメイト達は口々に揶揄するが、私は嬉しかった。だって私は谷中くんが好きなんだから……。
 先生が続けるように手を挙げて促してきた。
「ケーキやクッキーを用意すると、お茶が一層美味しくなり……」
「結局、谷中と木村はどうだったんだ?」
「別に何でもないんでしょ。谷中くんって結構女子の間で人気あるし、木村さんなんて相手にするはずないもんね」
 その言葉に胸がズキンと痛んだ。
 そうだよね。きっと他に好きな人がいるんだよね。私なんて……。
 そうやって自分に言い聞かせ、あきらめようとしていた矢先、谷中くんと目が合った。
「……っ!?」
 一瞬寂しげな笑みを見せ、すぐに視線をそらした谷中くん。私は思わず息を飲み、言葉が止まってしまった。
「どうした? 読みなさい」
 そのとき先生の声は耳に響いていなかった。
 ただ私の中で、もう一人の私が問い掛けていた。『本当にこのままでいいの?』と。それに対する答えは最初から出ている。ただずっと言えなかっただけで……。
 こんなの嫌! 私だって本当はもっとしたいことや、言いたいことがあるのよ!!
 そう心の中で叫んで、いつものように本音を押し殺したはずだった。
 でも……。
「なんだ?」
 谷中くんの顔を見ていたら、我慢の限界のように唇が震えた。
「本当に私が好きなこと、それは……」
「終わりじゃなかったのかよ?」
「好きな人と……一緒にいること……です」
「ちょっとやだ……これってもしかして、告白じゃないの?」
 教室の中が騒然となった。
「静かにしろ」
 先生が注意してもざわめきは止まらなかった。今まで興味なさそうに、下を向いていたクラスメイト達も、私の方を見ていた。
 一瞬怖くなった。でも言葉は止まらなかった。どうしても言いたいという、危機感にも似た強い欲求が、あったのだと思う。
「その人は縛られるのが嫌いで、いつも公園で本を読んでいて……」
 私の目に教室やクラスメイト達は、映っていなかった。ただ森林公園の情景が鮮やかに蘇り、それが言葉に変わった。
 「鳥やリスが大好きで、私にいつも優しくしてくれます……」
 耳を澄ますと鳥のさえずりが聞こえ、可愛らしいリスが首を傾げる。そして谷中くんの笑顔が、私の心をいっぱいにした。
「だから私は好きな人と一緒に過ごすことが、一番好きなことです」
 言い終えると同時にチャイムが鳴った。そこで私は夢から覚めるように我に返った。
「続きは昼食を挟んで五時間目だ」
 フラフラと席に戻ると徐々に緊張が解けて、不思議とスッキリした気持ちになっていった。
 私は先生が出ていったあと、皆の視線を感じながらも、谷中くんの席へ行った。
「木村お前……」
 谷中くんは少し驚いた顔で私を見上げた。
「谷中くんあのね」
「な、何だよ?」
「お昼ごはん……一緒に食べようよ」
「えっ」
 以前の私なら周りを気にして、とても口にできない言葉だった。
 でも今は谷中くんの顔を見ただけで、自然と口から滑り出した。
 さっきの告白で、言いたいことをはっきり言うことが、少しだけできるようになったのかも知れない。
「そりゃ構わないけど……でもいいのか?」
「うん」
「じゃあ、今日は激辛サンドイッチ買ってきたから、二人でひぃひぃ言いながら食べるか」
「賛成!」
 谷中くんの笑顔に、私は声を弾ませて頷いていた。昨日までのことを考えると、今の自分が信じられなくて、ちょっと驚いた。
 私は思い始めていた。正直言ってまだ人の目は気になるけれど、思いのままに行動してみようと。
 臆病な私だけど、谷中くんと一緒ならきっとできると思う。
★END★
2007. 09. 02  
20070902055238.jpg
まだなんとも言えませんが、ツインずテ?ルの新しいシナリオを書きました(量的には番外編一つと同じくらいの少ないものです)舞台は皆さん一度は行ったことがあるであろうアノ場所です。大人の事情でボツになったらすいません。
プロフィール

優妃崎章人

Author:優妃崎章人
■PNなど■
商業PN・優妃崎章人(ゆいざきあきひと)
同人PN・松永佳宏 (まつながよしひろ)
フリーシナリオライター・小説家
北海道旭川市在住

■仕事歴・小説などの出版物、著書■
パラダイム出版様より出版。アトリエさくら様原作『通勤痴漢電車アキバ行き』~女子校生に這い寄る無数の手~ ノベライズを担当

パラダイム出版様より出版。Softhouse-Seal様原作『魔物っ娘ふぁんたじ~』ノベライズを担当

パラダイム出版様より出版。May-Be SOFT様原作『へんしーん!!! ~パンツになってクンクンペロペロ~』ノベライズを担当

パラダイム出版様より出版。アイルチームドレイク様原作『恥感~少女は悦楽行きの電車に乗って~』ノベライズを担当

■仕事歴・シナリオ・企画など■
フレイルソフト様にて『隣の席のギャルピッチ』~僕は彼女のセックスフレンド!? シナリオを担当させていただきました。
http://www.frailsoft.com/

WHITESOFT様にて『さくらシンクロニシティ』
シナリオの一部を担当させていただきました。
http://white-soft.jp/

ANIM様にて『もしも用務員のおじさんが催眠を覚えたら…』
シナリオの一部を担当させていただきました。
http://www.hs-crowd.co.jp/anim/a_top.html

同人サークル・ソーラレイ様にて『オジサン泊めて 家出ギャルとのWINWINセックスライフ』シナリオ全て担当
http://www.solarray.jp/

アイル様にて『売淫令嬢~周芳院櫻子の罪穢~』シナリオ一部担当
http://www.ail-soft.com

サークルかぐら堂様にて『妹のオモチャにされてしまう僕』プロット作成・メインシナリオ担当
http://kagurado.net/top.html

アイル様にて『魔ヲ受胎セシ処女(おとめ)ノ苦悦2』シナリオ一部担当
http://www.ail-soft.com/

Norn様Mielにて『人妻柚希さんの筆おろしレッスン』シナリオ全て担当・演出指定
http://www.miel-soft.com/hitoduma/hitoduma_index.html 

HINA SOFT桃雛様にて『ママの運動会シナリオ一部担当』
http://www.hina-soft.com/ 

株式会社ネクストン・liquid様にて『催眠陵辱学園シナリオ一部担当』
http://www.tactics.ne.jp/~liquid/saimin/index.htm 

株式会社キューマックス・mini-mam様にて『女将静香』シナリオ一部担当
http://www.qmax.co.nz/mini-mam/okami/okami_top.html 

株式会社シュピール・ラブジュース様にて『辱アナ』
(企画書作成・キャラ設定・作画指定書作成・プロット作成・フローチャート作成・全シナリオ{全キャラ全シーン。テキスト量約1MB}を担当
http://www.love-juice.jp/product/ana/new_ana.htm

有限会社マリゴールド・アンダームーン様にて『D-spray』(子安愛、エッチシーン3つを担当しました)
http://www.marigold.co.jp/undermoon/OL/index.html

有限会社マリゴールド・ルネ様にて『女優菜々子』(メインライターとして、全キャラクターのメインシナリオと、調教パートの一部を担当しました。全体の七割半、テキスト量にして750KBほど)
http://marigold.kululu.net/lune/nanako/index.html 

その他、メーカー様のご都合により、公開できないお仕事歴有り。

■同人歴■ 
サークルくまくまかふぇ 同人ソフト・『ツインずテ~ル』企画・原作・全シナリオ担当・フローチャート作成
http://kuma2cafe.rejec.net/blog/

サークルくまくまかふぇ 『蛙の鳴き声』(企画・原作・全シナリオ担当)

■お仕事依頼など■
ゲームソフト企画制作及び、シナリオ執筆業務。小説執筆、その他企画制作など、承っております。サンプル作品などご希望の場合は、下記アドレスまで、お気軽にご連絡下さい。恐れ入りますが、全角の部分を半角に打ち直して、ご送信下さい。宜しくお願い申し上げます。

KIRIKO27@hotmail.co.jp

■お打ち合わせなど■
全国どこへでも、赴くことが可能でございます。こちらについても、お気軽にご相談下さいませ。

■著書・小説などの書籍■








■シナリオや企画を担当したゲームソフトなど■
『隣の席のギャルビッチ ~僕は彼女のセックスフレンド!?~』 ダウンロード:2016年04月15日(金) 発売予定!
























最近のトラックバック
月別アーカイブ
カテゴリー
ブロとも申請フォーム
ブログ内検索